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これは日本も大いに学ばねばね(^~^)
台北の景色が変わった。
台北といえば、バイクの洪水というイメージが強い。しかし、最近は、その洪水のなかに、オレンジ色と緑色が混じった派手な自転車の姿を見かけるようになった。
道路には自転車レーンが新たに整備されており、駅前のスペースには、必ずと言っていいほど、ステーションが設置されている。自転車が戻ってくるのを待って並んでいる人の姿も見かけるし、夜の公園では、ベンチの前に自転車を止めて、恋を語らう若者たちの姿もある。
台北の公共自転車シェアリング「YouBike」は、導入から2年で、周囲の予想を大きく覆し、大成功をおさめている。自転車一台の一日あたりの利用者数は平均で10人を超え、世界最高レベルに達している。自転車シェアリングの導入が欧米などに比べて遅れていたアジアにおいて、首都レベルの規模ではおそらく最初の成功例だろう。

台北で始まった自転車シェアリングが大人気。自転車のクオリティも高く、乗り心地はいい。
世界中から視察申し込みが殺到
借りた自転車をどこでも返せるのが自転車シェアの特徴だ。借りた場所に返さなくてはいけない自転車レンタルと根本的に異なる。自転車シェアは基本的に公共交通機関の一部として使うもので、自転車レンタルは観光などに使われるものだからである。
自転車シェアはビジネスとして成立することが難しい。なぜなら、まず一定の規模が重要なので、最初に多くのステーションや自転車などかなりの初期投資が必要となる。しかも公共交通であるため利用料金も高くは設定できず、一台あたりの収益が高くはならないのである。
そのため、自転車シェアの導入に二の足を踏む国や自治体が多く、必要性は認められながら、広がらないというジレンマに陥っていた。ただ、パリやニューヨーク、ロンドンなどで本腰を入れて導入が進んでいるのに対し、アジアでは成功例がほとんどなかった。そのなかで、台北市の「成功」は世界の注目を集めており、世界中から視察の申し込みが殺到しているという。
まず、私自身で乗ってみることにした。最初は台北市信義区のオフィス街にあるステーションを訪れた。最初の利用者登録には、台湾の携帯電話と悠遊?(Easy Card)という日本のSuicaのようなカードが必要だ。登録すると携帯に暗証番号が届き、それを入力すればすぐに利用できる。外国人でも悠遊?は買えるが、携帯電話はハードルが高い。その場合はクレジットカードで利用できる。利用者登録ができるステーションはいくつかの大きなステーションに限定されているので、調べてから行くことをお勧めする。台北市内のステーションは現在160カ所。ほぼ、数百メートルごとの大きな交差点や駅、公園などにステーションが見つかる感じだ。スマートフォンのアプリで現在地から最も近くて自転車に空きがあるステーションが分かる。
■初乗り30分はタダ
では、台北市民はどのように自転車シェアを利用しているのだろうか。知人たちに聞いてみた。
たいていは、通勤や通学の補助に使っているという。今は台北市も郊外に住宅地が拡大している。地下鉄に乗って市内まで来ると、会社にあと歩いて10分のところまではたどり着ける。そのあと、YouBikeで会社や学校の近くまでに行き、帰りも同じように乗って帰るというやり方だ。
こうした利用実態を、台北市は「最後の一マイルの交通手段」と呼ぶ。ほかにも若者たちは、夜に遊びに出かけるときに利用したり、デートで使ったりと、夜の利用率は昼間よりもかえって高くなることもある。
何しろ価格が安いことが台湾の人々にとっては魅力のようだ。初乗りから30分までは無料。そのあとは4時間利用までは30分ごとに10台湾ドル(34円)、4時間から8時間までは30分ごとに20台湾ドル、それ以上の利用だと30分で30ドルと少しずつ上がっていく。地下鉄の初乗りが20台湾ドルなどで、基本的にかなり低めの設定であることが若者に人気の理由だろう。
台湾のYouBikeは2012年8月の導入以来、きわめて順調に利用者を伸ばしてきた。延べ利用者は2013年6月には利用者500万人を突破し、昨年11月には1000万人、今年5月19日にはとうとう2000万人に到達した。現状では市民一人につき年間に4回乗っている計算になる。
■パリをもしのぐ、世界一の利用率
台北の自転車シェアが注目される最大の理由は、この急速な普及ぶりだけではない。自動車一台につき一日に何人が利用するのか――その利用率の高さに注目が集まっているのだ。
今年4月時点で、利用率は1台につき1日12人に達しており、毎月出される利用率平均でもこの1年間で平均10人をキープしている。月によっては12台に達したこともあった。台北市によりと、自転車シェアの先進地であるパリをしのいで世界一だという。また、自転車の紛失率だが、パリが2割に達しているのに対し、台北では現在まで紛失が数十台に過ぎず、利用者のマナーも高い。
自転車シェアでは台数が人口の1%に達するかどうかが成功の鍵を握ると言われている。台北市の人口はおよそ250万人だが、YouBikeを設置する中心地域の人口は100万人ぐらいだとすると1万台が必要ということになる。
現在、YouBikeは台北市内に162ステーションまで達しており、第一期の計画で目標としていたステーション数を確保したが、今後、最終的には300ステーションまで広げる可能性があるという。年内には300ステーション、1万台に拡大する見通しだ。
また、台北の好調をぶりに刺激され、周辺自治体も導入に乗り出している。台湾中部の中規模自治体である彰化県では今年春から400台の自転車で試験運用を始めている。また、台湾で最大の人口を持つ新北市も導入を検討しているという。
■圧倒的な高品質。ギアミッションはシマノ製
そもそもYouBikeは、環境都市化を目指す台北市が、バイクなどの排気ガスによる空気汚染などを食い止める措置の一環として導入したものだった。台北市は、世界最大の自転車の完成車メーカーである台湾のGIANTに、YouBike事業の委託を打診。自転車文化を広げることに熱意を持つGIANTの劉金標会長が受諾し、事業が動き出した
GIANTは自転車メーカーとして投入できる最善のノウハウを、この自転車シェア事業に持ち込んだ。それゆえ、YouBikeで使用する自転車はクオリティが高い。タイヤやフレームなど部品はすべて特注にして、盗んでもほかの自転車部品に流用できないようにしている。
しかも、通常の自転車よりも丈夫な構造にして、故障や経年劣化による修理や交換のコストを抑えるようにした。三段変速のギアミッションは、世界の最高級メーカーであるシマノを使っている。ランプは夜になると自動的に点灯する仕組みになっている。また、女性の利用者が多いことも想定して、あらかじめスカートが車輪に巻き込まれないように、車輪にはカバーもつけられている。
これだけいいものだから、乗り心地が悪いはずがない。車体は比較的重いのだが、走り出すと振動も少なく、坂道の少ない台北の町中を自由自在に走行できる。また、台湾では自転車専用道路の整備も同時に急ピッチで進めており、利用環境は日々よくなっている印象だ。
世界における自転車シェアの先行例で最も有名なのが、すでに2万台以上が稼働しているパリだろう。ロンドンでも1万台が動いていると言われる。また、ニューヨークでは昨年からスポンサーであるシティバンクの名前を冠した「シティバイク」が導入され、台北と同じ5000台が動いている。利用方法は台北とは微妙に違うが、これからの都市交通のなかで、自転車の役割を高めていくという長期的な展望で行われていることは共通している。
■東京には「本気度」が足りない
日本においては、自転車シェアは失敗の歴史を繰り返してきた。最大の理由は、その実施規模が中途半端だったことだ。
日本シェアバイク協会の小林副会長によれば、通常、自転車シェアが成功するには、人口の1%程度の台数が必要だという。その意味では、パリがようやくこの水準に達しているが、台北でもまだ足りない。ましてや日本では、香川県の1250台が最高で、ほかには東京江東区や横浜市などが300台という数字にとどまっている。
その最大の理由は区割りでしか動けない行政のあり方だと言われている。人間の行動様式は区単位ではない以上、区がいくら単独でがんばっても、自転車シェアがユーザーのニーズをとらえることはできない。
東京都の舛添新知事は、2020年の東京五輪に向けて東京を「TOKYO自転車シティ」にするというビジョンを打ち出した。今日の東京の交通システムのなかで効率的に大量の観光客を受け入れるには、東京のサイクルシティ化しか解決策はないが、東京の歩みはあまりに遅い。区ごとにしか動かない行政システムの弊害に加え、東京都自身に「本気度」が足りないからだ。
日本が環境型社会に向かうことは国民的コンセンサスだ。自転車は健康にもいいので医療費抑制につながる。もちろん交通渋滞の抑制にもなる。あらゆる意味から考えて、将来の日本にとって意義がある自転車シェアを台北に見習って始める時期が来ている。
シェアバイクは、基本的になかなかビジネスとして割に合わない。事業者に対し、行政が一緒になってサポートを行うことが不可欠だ。台湾のシェアバイクも、30分までの無料部分のコストを台北市が負担することで採算を合わせている。
スしかし、それでも街の活性化や大気汚染の改善、街の回遊性の向上、市民の健康増進など、長期的に住民に与えるプラス効果は大きい。そうした観点からも日本のお隣の台湾でのYouBikeの成功は大きな啓示になるはずである。
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